2011年4月30日土曜日

4号機使用済核燃料プールは壊れて水が漏れている

4月28日、東電は4号機プールに水漏れの可能性は低いと発表したが、
4号機の使用済核燃料プールは壊れている


フロアに広がる4号機の核燃料汚水
3月20日の放射温度写真では4号機のフロアに熱源(黄色い枠の中)が広がっており、核燃料を含んだ高温の汚水がフロアの広い範囲に存在するように見える(防衛省撮影)。3月20日の時点で4号機の使用済核燃料プールは壊れていたようだ。


10万倍の放射線が計測されていた

東京電力は4月13日、福島第1原発4号機で、使用済み核燃料プールの水温が90度まで上昇していると発表した。付近の放射線量も毎時84ミリシーベルトと極めて高い。通常は普段着で歩くことができる同0・0001ミリシーベルトという。今月12日に燃料棒の損傷度を調べるためプールの水を遠隔操作で採取した結果、水温が爆発前日の84度を上回る90度と判明。プールの約6メートル上空で通常の10万倍以上の放射線量が計測されている。

東日本大震災:福島第1原発事故 4号機プール異常高温 汚染水対策、注水増やせず
http://mainichi.jp/select/weathernews/news/20110413dde001040011000c.html


4号機使用済核燃料プール付近の映像
壁に開いた大きな穴から緑色のクレーン(黄色い矢印)が見え、その下にプールがある。

上記クレーン部分の拡大写真
緑色のクレーンの下にある使用済核燃料プールから水蒸気が出ている(黄色い矢印)。

1日の推定蒸発量約70トン

東京電力は4月26日、福島第1原発4号機の使用済核燃料プールの水が漏れている可能性があると発表しました。

東電によると、プールには、使用済み核燃料集合体が1~3号機より多い1331体入っています。

水漏れの根拠として1日の推定蒸発量約70トンに対し、コンクリート圧送車での放水が、24日165トン、25日210トン、26日160トン。それでも水量が想定より12~48トン少ないそうです。

また、4号機では今月、原子炉建屋の地下が深さ約5メートルの汚染水でほぼ水没しているのが見つかったほか、タービン建屋地下にたまった汚染水の放射性物質の濃度が1カ月で約250倍上昇していることも水漏れの存在を示唆しています。

参考
東日本大震災:福島第1原発事故 4号機プール水漏れか 水位上昇不十分
毎日新聞2011年4月27日
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20110427ddm003040079000c.html


注水で水が漏れる核燃料プール
左は2011年4月12日、右は2011年4月20日に撮影した福島第一原発4号機の使用済核燃料プール付近の写真。4月12日の写真にはプール付近から流れる水の跡が写っている。4月20日の写真では別の破損個所からも水が流出しており水漏れが拡大しているように見える。


注入した大量の水は何処へ消えた?
これは事故が起きた3月15日の翌日、3月16日に撮影された4号機プール付近の写真です。当時の写真では流出する水の跡は目立ちません。東電は4号機使用済核燃料プールの1日の推定蒸発量は約70トンと発表していますから、ここに保管されている核燃料の持つエネルギーがいかに大きいか判ります。

このプールに入っている燃料棒は、ジルコニウムの合金でできたパイプの中に約1センチのウランを焼き固めた燃料「ペレット」が数百個入っています。ちなみにペレット1個分のエネルギー量は、一般家庭の消費電力の約8か月分にもなるそうです。プールにあった大量の水は蒸発したのでしょうか?


4月12日に撮影された4号機のプール
水が混濁しており核燃料が見えない

4月28日に撮影された4号機のプール
大量の注水で水が透明になりプールの底にある核燃料が見えるようになった。


東電は「漏水の可能性ない」と発表したが

4月28日、東京電力は「漏水の可能性はないと発表しました」。プールへの放水を続け、27日午後3時過ぎに満水になった後、20時間で水位が35センチ下がった。プール内の核燃料から出る熱で水が蒸発し、減ると予想された範囲に収まったという。


放射温度写真では漏水が見える
防衛省が4月12日に撮影した放射温度写真では建屋外に流出する熱源が写っている(赤い矢印)。フロア内に広がる熱源も見える(黄色い枠内)。使用済核燃料プールの水はタービン建屋側に流出しているように見える。


4号機の水漏れを疑うT-Hawk映像 
放射温度写真ではタービン建屋側に水漏れを疑う箇所がありました。T-Hawkが4月21日に撮影した映像でも、タービン建屋側の壁に開いた穴から水が流れているように見えます(黄色い矢印の先にある黒い部分)。

コメント

4号機の使用済核燃料プールは、膨大な熱と放射線を発し、プールの水が大量に蒸発したためプールの水深が上昇しないと報道されている。今回は大量の注水で核燃料を冷却し、再臨界の危機を乗り切ったようだ。前回の検査では混濁していたプールの水が透明になったようだ。しかし、24日は66度だった水温が、29日は88度に上昇しており予断を許さない状況が続く。4月20日に撮影された4号機の写真では壁面を流れる水の量が増えており、再臨界を防ぐためにプールへの注水を増やすと、放射性物質に汚染された水があふれるというジレンマに直面しているようだ。

4月28日、東京電力はプールからの水の漏出は無いと発表したが公開された静止画、動画、放射温度写真には水の漏出が写っている。

また、4号機建屋には「筋交い」が無く大量の注水により自重で崩壊する可能性がある。

東京電力は原発作業員の安全を守れるのだろうか?

参考

使用済核燃料プールの危機
http://phnetwork.blogspot.com/2011/04/blog-post_23.html

4号機使用済核燃料プール付近から水漏れ
http://phnetwork.blogspot.com/2011/04/blog-post_5370.html

4号機の使用済核燃料プールは無事なのか
http://phnetwork.blogspot.com/2011/04/blog-post_862.html

【原発】4号機の使用済み燃料「大きな損傷なし」(テレビ朝日4月30日)
設計図流出!大破した原子炉建屋に筋交いが無かった

2011年4月29日金曜日

東電が作業者の被ばく限度を350mSvに引き上げ検討

  
報道によると東京電力は「健康上の問題はない」として作業者の被ばく限度を350mSvに引き上げるよう検討しています


福島第1被ばくは別枠=最大350ミリシーベルトに―「働けなくなる」東電検討
時事通信 4月28日(木)21時24分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110428-00000167-jij-soci

 東京電力の松本純一原子力・立地本部長代理は28日の記者会見で、福島第1原発の作業員の被ばく限度について、今回の事故の緊急作業による被ばくと、通常作業での被ばくを別枠として扱うことを検討していると明らかにした。

 緊急作業による被ばく限度は特例で250ミリシーベルトとされているが、通常の限度は1年で50ミリシーベルト、5年で100ミリシーベルト。別枠で扱わないと、緊急作業に従事して通常の限度を超えた人が他の原発で働けなくなるという。

 合計すると5年間で最大350ミリシーベルトとなるが、松本代理は健康上の問題はないとして、厚生労働省や経済産業省原子力安全・保安院と協議する考えを示した。

記者会見する東京電力の松本純一代理
(内容は記事と関係ありません)


コメント

報道によれば東京電力の松本純一代理は「健康上の問題はない」として作業者の被ばく限度を350mSVに引き上げるよう要望したそうです。本当に健康上の問題は無いのでしょうか?


もちろん間違いです。
被ばくした放射線量が、およそ100ミリシーベルト以上の放射線量では、がんで死亡する人の割合を高めると考えられています。

出典 放射線総合医学研究所


東京電力のホームページにも記載があります。
(今は削除されました)
彼らは350mSvの被ばくで、がんが増えることを知っています。
(クリックで拡大)

上記文書の黄色い枠内に書いてあること

Q どのくらいの量の放射線を受けると人体に影響があるのですか?

A 放射線を受ければ受けるほど、がんの発生確率が増えるということです。

また、200ミリシーベルト以上ではがんにかかり易くなるということも東京電力はわかっています。 http://www.tepco.co.jp/nuclear/hige/qa/thi/cqa/qa-c5-j.html



上記文書の赤い枠内に書いてあること

一般の人の線量限度 1.0mSv/年
原子力発電所周辺の線量目標 0.05mSv/年

出典 人体影響 東京電力


これはひどい話ですね。



文部科学省「子供の被ばくを米原発作業員並みに設定」

文部科学省は子供の被ばく上限を米国の原発作業員並み20mSVに設定しました

原発事故の処理に打つ手無しの模様

文部科学省は子供の1年間の許容被ばく線量を「20ミリシーベルト」に設定しました。
学校の放射線量、暫定基準を公表 文科省(朝日新聞4月20日)

 ノーベル賞も受賞した国際的な医師の団体がワシントンで会見し、文部科学省が子供の1年間の許容被ばく線量の目安を「20ミリシーベルト」に設定したことに疑問を呈しました

 ヘルファンド博士は、「子供の場合、がんになるリスクが成人よりも2倍から3倍高くなる」と指摘して、許容される被ばく線量の基準を引き下げるよう求めました

アメリカでは、原子力関連施設で働く人の1年間の許容量の平均的な上限が年間20ミリシーベルトとされています。

テレ朝
【原発】「子供の許容被ばく線量高すぎる」と疑問
http://www.tv-asahi.co.jp/ann/news/web/html/210427018.html



厚労省「原発労働者の被ばく上限を白血病やがんの危険が高まる250mSVに設定」

【東京消防庁】福島原発 アラーム鳴りっ放しの中で命がけの放水。

厚労省は「100mSVを超えると白血病やがんの発生リスクが高まる」と認めつつ、原発作業員の被ばく線量上限を250mSVに引き上げました。

厚生労働省は、通常時は年間50ミリシーベルトと定めている原発作業員の被ばく線量の上限を当面の間、撤廃する方針を固めたそうです。既に厚労省は3月15日に省令で、福島の事故の応急対策に限定して被ばく線量を100ミリシーベルトから250ミリシーベルトに引き上げていました。

一方、厚労省は「100ミリシーベルトを超えると白血病やがんの発生リスクが高まるという医学的な知見もある」として、5年間で100ミリシーベルトの基準は維持することにしたそうです。

だったら上限は「100mSV(ミリシーベルト)」にすべきです!

参考
東京新聞2011年4月28日
年50ミリシーベルト上限撤廃へ 厚労省が特例措
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2011042701001119.html


被ばく線量を記録せず 東電
福島50:日本の英雄達への涙と祈り (ABCニュース)


東電、被ばく線量記録せず 後から行動聞き取り推計

 東電によると、屋外の現場作業などをする場合は線量計を持参し、被ばく線量を毎日、台帳などに記録して管理している。だが、免震重要棟内では時間当たりの放射線量を記録していただけで、線量計を身につけていなかったという。
 棟内では事故後、高い線量が続き、水素爆発などが起きた直後には、毎時100マイクロシーベルト(0・1ミリシーベルト)を超えたこともあったという。4月26日現在の線量は毎時1・5~3マイクロシーベルト。
これでは被ばく上限を設定しても意味がありません。

参考
共同通信2011年4月28日

東電の女性社員は5mSVまでよ!

女性社員は、事故発生から消防車の給油作業などにあたっていましたが、これまでの総被ばく量が17.55ミリシーベルトに達しました。これは、女性作業員の限度量となっている3カ月で5ミリシーベルトを大きく上回ります。東京電力によると、女性の健康に影響はないということです。

テレ朝
【原発】東電の女性社員が限度量を超える被ばく
http://www.tv-asahi.co.jp/ann/news/web/html/210427016.html


今、民間人の被ばく限度量は1mSVですが
これも引き上げられる模様です。

しかし、こんな報道がありました。

年間の被曝限度量、引き上げを検討 原子力安全委

原子力安全委員会は5日、放射線量の高い地域の住民の年間被曝(ひばく)限度量について、現在の1ミリシーベルトから20ミリシーベルトに引き上げるべきか検討を始めた。放射線の放出が長引き、「長く生活する観点で考えないといけない」とし、現実路線への見直しを検討する。
 会見した代谷誠治委員は「防災対策での退避は通常、短期間を想定している」と指摘。すでに数週間に及ぶ退避や避難の考え方について、政府から見直しを検討するよう相談されていることを明らかにした。 

朝日新聞2011年4月5日
http://www.asahi.com/health/news/TKY201104050616.html


コメント

文部科学省が先日発表した日本の子供たちの被ばく限度量が米国の原発作業員並みだったことには驚いた。これまでの1ミリシーベルトから20ミリシーベルトに引き上げた根拠をきちんと示してほしい。被ばく限度量を引き上げる前に、やるべきことがある。それは放射能汚染を止めることである。
被ばく限度量を引き上げるということは福島第一原子力発電所で起きた原子力事故の収束をあきらめているように見える。



もはや収束に向けて打つ手がないのか
原発事故による放射能汚染の拡大が終息せず、
「ただちに健康に影響がない」と発表するためには「被ばく限度量を引き上げる」以外の選択肢が無くなったもようです。

2011年4月27日水曜日

設計図流出!大破した原子炉建屋に筋交いが無かった

原子炉建屋の設計図がネットに流出したそうです。東京電力は原子炉の設計図について、「メーカーのノウハウがある」などの理由で公表を拒否しているそうです。そこで今回は原子炉の設計問題を取り上げました。


爆発したマークⅠ型原子炉
今回事故を起こした福島第一原子力発電所の1号機から4号機はすべてマークⅠ型と呼ばれる原子炉でした。

参考
原子炉建屋の設計図がネット流出 福島第一1号機か
http://www.asahi.com/special/10005/TKY201104250626.html


3号機と4号機は、なぜ大破したのか?
画面左から4号機、3号機、2号機、1号機


1号機はGE、2号機はGE・東芝、3号機は東芝、4号機は日立
プラント主要緒元 主契約者


GEの原子炉は欠陥品と指摘されているが


GE社製1号機建屋には筋交いが入っていた
筋交い(すじかい)とは、柱と柱の間に斜めに入れて建築物や足場の構造を補強する部材である。「筋交」「筋違」とも表記され、ブレース(brace)とも呼ばれる。構造体の耐震性を強める効果があり、建築基準法では一定の割合で筋交いを使用することが義務づけられている。柱と梁の形づくる長方形は、接合部の強度に余裕がないと、地震や暴風などの水平力を受けたときに平行四辺形にひしゃげるように変形してしまう。ここに対角線状に筋交いを加えて三角形の構造を作り、変形を防止するわけである。

参考 ウィキペディア


GE社製1号機の筋交い拡大写真
構造を補強する筋交いがX字状に入っている。筋交いに使用されている鉄骨は太い。壁は吹き飛んだが太い鉄骨構造が建屋と原子炉の大破を防いだ。


GE社製原子炉設計図には筋交いが描かれていた!


一方、東電から流出した設計図は筋交いが無い!
参考 原子炉設計図が流出


大破した3号機には
筋交いが入っていなかった!
3号機の原子炉は東芝製である。網の目状のコンクリート構造が見えるが筋交いが入っておらず壁は薄い。

3号機の拡大写真
筋交いは見えず、細い鉄筋が見える。壁も薄かったようである。


4号機にも筋交いが入っていなかった!
4号機の原子炉は日立製である。4号機にも筋交いが入っておらず壁は薄く吹き飛ばされている。


4号機の壁面拡大写真
 構造を補強する筋交いは見えない。コンクリートから飛び出した鉄筋は細い。壁は薄く、ペラペラしている。


コメント

4月26日付の朝日新聞で、東京電力は原子炉建屋の設計図について、「メーカーのノウハウがある」などの理由で公表を拒否しているというコメントがあった。しかし、原子炉建屋の見取り図は以前からネットで検索すれば誰でも簡単に閲覧することができる状態であった。原子炉本体には企業秘密があることは理解できるが、なぜ建屋の設計図を秘密にする必要があったのかは不明である。しかしながら、GE社の設計図と東電の設計図を比較すれば建屋の筋交いが省略されたことが容易に判る。念のため大破した3号機と4号機の写真を見直してみたところ筋交いは見えず、使用された鉄筋はとても細く、壁も薄かった。3号機と4号機の建屋は当初から強度が低かったようである隠したかった「メーカーのノウハウ」とは何だったのか。むしろ十分な情報公開がなされていれば今回の事故を防いだのではないかと悔やまれる。


参考 

元東芝原子力設計技術者に聞く大震災原発事故


使用済核燃料プールの危機

4号機の使用済燃料プール付近から水漏れ

3号機内部ロボット撮影で「天井や壁に穴」

東京電力が3号機建屋内映像を公開

 Packbot(ロボット) が撮影した福島第一原発3号機建屋内映像(4月17日撮影)


爆風で開いたドアと天井の穴
青のボックス内に壊れたドアが見える。事故当時は閉まっており爆発によって開いたと説明されている。このドアの上部にも外部の光が漏れている部分がある。よく見ると天井に穴が開いており(黄色い円内)壊れた鉄筋を通して光が入ってきている。床面には様々な破片が飛散している。


変形した鉄板
曲がった板状の物体は鉄板だと思われる。一階フロアに生じた爆風の衝撃の強さを物語る。床面には水が流れており電気機器類はおそらく使用できないと思われる。


壁にも穴
壁に開いた穴から光が差し込んでいる(黄色い円内)。よく見ると太い鉄骨がむき出しになっている。壁に並んでいる機械類も傾いたり表面のパネルが外れたりしている。


折れ曲がった梯子
爆風でグニャリと曲がった梯子が見える。衝撃の強さを物語る。機械の下の床面には水が漏れた跡がある。よく見ると、この梯子はドアのハンドルの回転を妨げており、ロボットはこのドアを開けることができなかったようだ。


水をかぶった機器類
機器類の下に水が漏れ出ており黒っぽく映っている。


床に散乱する瓦礫
破損したコンクリートの柱から鉄筋が飛び出ている。


コメント

東京電力は4月2日の記者会見で1-3号機で残留熱除去系のポンプにケーブルを接続したと発表している。上手くいけば残留熱除去系で原子炉の冷却が可能になったはずである。しかし、一向に朗報が聞こえてこない。やはり残留熱除去系の復旧は困難を極めるようだ。
3号機の損傷について公式発表では5階のフロアだけが吹き飛んだとされているが、実際には壁や天井にも穴が開いており鉄筋まで見えている。5階のフロアだけが吹き飛んだという説明では一階の天井や壁の損傷が説明できない。
一階の床には機械のパネルや鉄板、瓦礫など様々なものが飛散している。更には天井から水が漏れており機械の下から水が流れている。おそらく残留熱除去系も損傷しているだろう。

参考
東電:福島第一原発1-3号機で残留熱除去系のポンプにケーブル接続


2011年4月25日月曜日

福島第一原発3号機は2回爆発した

福島第一原発3号機爆発映像を検証していきます。

東京電力は「3号機で2回の爆発音が聞こえた」と発表していますが一部の海外のメディアでは3回の爆発があったように報道しています。実際はどうだったのでしょうか?


3号機と1号機の爆発の特徴
1号機と2号機の爆発を比較した映像は23秒頃から始まります。1号機の爆発は噴煙が横方向に広がりますが、3号機の爆発では噴煙を上方に噴き上げています。


東京電力発表
「3号機で2回爆発があった」

海外のメディアでは3回の爆発音入りの動画が放送されていますが、映像は20キロ圏外から撮影されており音速を考えると爆発直後に爆音が入るはずはなく、単なる効果音だと思われます。もし映像に音が入るならば爆発後6秒後以降に聞こえるでしょう。東京電力は、3月14日午前11時ごろ、福島第一原子力発電所3号機で、2回にわたって爆発音が上がったと発表しました。ここでは東京電力の発表が正しかったのかを検証していきます。

参考
福島第一原発3号機の水素爆発、けがは11人(朝日新聞2011年3月14日)
「東京電力は、14日午前11時ごろ、福島第一原子力発電所3号機で、2回にわたって爆発音が上がったと発表した。」
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20110314-OYT1T00313.htm


3号機爆発前の映像
上記NTVの映像より作成


最初に南側で巨大な火の玉
最初に3号機建屋南側の壁が吹き飛び、巨大な赤い火の玉が見える


次に巨大なきのこ雲が発生
巨大なきのこ雲が形成されており、上方向に強い爆風が噴出した。爆発は東電の発表通り2回あったようです。


最初の爆発は使用済核燃料プール付近
最初に使用済核燃料プール付近で爆発が起き、南側の壁が吹き飛び巨大な火の玉が生じた。


2回目の爆発は上方向へ
2回目の爆発では上方に高く噴煙を噴出し、まるで火山の爆発のようです。このような上方に噴煙を噴き上げる爆発は建屋の構造上から原子炉格納容器で発生したと考えられます。爆発で巨大なコンクリート様の構造物が上方へ吹き飛ばされているのが見えます。


巨大なコンクリート片が舞い上がる
映像では巨大なコンクリート様の構造物が上方に噴き上げられ(灰色のライン)建屋周囲に落下してきます。原子炉建屋の構造図を見ると、この巨大な構造物は原子炉格納容器の上部にあるシールドという構造物のように見えます(黄色の円内)。

参考
福島第1原発事故 3号機近くで高放射線量のがれき 1時間あたり900ミリシーベルト
東京電力は、福島第1原発の3号機の近くで、高い放射線量のコンクリートのがれきが見つかったと発表した。放射線量は、これまで見つかったがれきで最も高い、1時間あたり900ミリシーベルトを計測している。
http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00198074.html

東電の発表は正しかった!
3号機の2回爆発を裏付ける2色の煙 
NNN映像の8秒頃の映像には下方で水平に広がる白煙上方に噴き上げる黒色の噴煙が見え東電発表の通り2種類の爆発があったようだ。そして何らかの構造物が原子炉の真上に上昇していく。白色の噴煙は使用済核燃料プールの爆発による水蒸気であろう。黒色の噴煙は原子炉格納容器の爆発により砕かれた格納容器上部のシールドや周囲のコンクリートに見える。黄色い円内には垂直に上昇していく物体が映っており、この真下に原子炉があることから、原子炉上蓋もしくは、その上に置かれたシールドの可能性がある。

コメント

福島第一原子力発電所3号機の爆発について海外の一部のメディアでは3回の爆発音入りの映像(おそらく効果音入り)が報道されたため3号機の爆発は2回だったとする東京電力の発表と矛盾していた。このため中立の立場で映像を検証してみたが3回目の爆発は確認できず、爆発は東京電力の発表通り2回だった。最初に3号機の使用済核燃料プール付近が爆発し、続いて原子炉格納容器が大爆発したようだ。3号機は既に大きく壊れており再度の爆発可能性は少ないが、仮に爆発しても小規模なものにとどまるであろう。現時点で爆発の可能性が残されているのは1号機の損傷の少ない原子炉と4号機の使用中核燃料を入れた使用済核燃料プールであろう。

参考
放射能汚染の最大の原因は3号機の穴か
http://phnetwork.blogspot.com/2011/04/blog-post_24.html

使用済核燃料プールの危機
http://phnetwork.blogspot.com/2011/04/blog-post_23.html

福島第一原子力発電所1号機の原子炉圧力上昇続く
http://phnetwork.blogspot.com/2011/04/1.html

2011年4月24日日曜日

放射能汚染の最大の原因は3号機の穴か

放射能は何処から出たのか?
米国エネルギー省が福島第一原子力発電所付近の放射線濃度を発表しました。汚染の原因となった放射性物質は何処から放出されたのでしょうか


米国エネルギー省が汚染地図を発表

赤、黄、緑の順に放射能汚染の強さを表現しています。


放射能汚染の最大の原因は3号機か

プルトニウム検出は3号機の爆発が原因か(日刊スポーツ2011年3月30日)より

「福島第1原発事故で、同原発敷地内から毒性の高いプルトニウムが検出された。プルトニウムは自然界にはほとんど存在しない。なぜ、敷地内から検出されたのか? 使用済み核燃料の再利用の専門家、名古屋大エコトピア科学研究所の榎田洋一教授(52=核燃料サイクル工学専攻)は、3号機が水素爆発した14日に飛び散った可能性が高いと推察した。…14日に3号機が水素爆発を起こした。あの爆発では、水蒸気が高く舞い上がっていた。爆発による圧力波は放射状に均等に飛散するので、上方向だけではなく、下方向にも同様の圧力波が出ている。そのときに、使用済み燃料棒貯蔵プールにあったMOX燃料(プルトニウムとウラン混合体燃料)から飛び散ったと推察する。」

参考
プルトニウム検出は3号機の爆発が原因か 日刊スポーツ2011年3月30日


3号機の原子炉格納容器は爆発したのか?
福島第一原子力発電所3号機を上方から観察する画像がありました。3号機の原子炉格納容器に穴が開いた可能性は既に述べています。

参考
3月12日、3号機原子炉の底に穴が開いた?



3月16日東電撮影映像



47秒頃の3号機上部の映像
 動画では状態が良く判りませんので静止画を見ていきます。


原子炉格納容器の位置を推定
黄色い枠内が使用済核燃料プール、青い枠内が昨日紹介した空のプール、赤い枠内に原子炉格納容器上部があります。原子炉格納容器上部が黒く見えます。ここに穴が開いているのでしょうか。正常では原子炉格納容器上部には上蓋があり、その上に厚いコンクリートの板を重ねてあります(右上の図面)。

参考
3号機原子炉格納容器付近のクローズアップ


48秒頃の3号機上部の映像




同様に原子炉格納容器を推定
赤い枠内が原子炉格納容器上部です。やはり黒っぽく見え、穴が開いているようです。黄色と青の枠内にはプールが見えます。


50秒頃の3号機上部の映像


同様に観察します
やはり原子炉格納容器上部に穴が開いているように見えます。


コメント
3号機の原子炉上部に存在した厚いコンクリートの蓋が吹き飛んでおり、本来は原子炉格納容器がある場所に穴が見える。3号機には毒性の高いプルトニウムを含むMOX燃料が使用されていたが、東京電力が発表した資料では原子炉格納容器上部にも破損があるように見えることから3号機が最大の汚染源になったと見られる。

原子炉格納容器(後方)と原子炉上蓋(手前)


2011年4月23日土曜日

使用済核燃料プールの危機

福島第一原発3号機4号機の使用済核燃料プール画像を見ると
3号機のプールは壊れ、4号機のプールでは核燃料が燃焼中のようです。


3号機の使用済核燃料プール
3号機の使用済核燃料プール(3月15日東京電力撮影)。青い円の内側にプールがある。プールは浅く、大量のスクラップが沈んでいる。水は透明である。



3号機の使用済核燃料プール 近景
3号機の使用済核燃料プールの近景(4月14日東京電力撮影)。青い枠内に澄んだ水が貯まっている。プールの底に瓦礫が入っており、底は浅い。プール周囲のコンクリートが破損しており、セメントの破片や鉄筋が散乱している。プールが激しい損傷を受けていることから貯蔵されていた核燃料が損傷した、あるいは吹き飛んだ可能性は否定できない。また、損傷を受けたプールが自重で崩壊する恐れもある

参照
3号機の使用済核燃料プールの底が見える



4号機の使用済核燃料プール
注水ポンプ車の先にカメラを付けて撮影(4月14日東電)。使用済核燃料プールの水を採取している。プールの水は濁っており底が見えない。



4号機の使用済核燃料プール(2)
4号機の使用済核燃料プール(4月14日東電)。水を採取するための器具を水中に入れたが、水が濁っており底が見えない正常な状態ではプール水面から10メートル下にある核燃料が明瞭に見えるはずである。今回の作業では水を採取する器具をプール表面からわずか2メートル下に入れただけで器具が全く見えずプールの水が混濁していることが判る。4号機の使用済核燃料プールには、被災当時点検中だったため、使用済核燃料だけでなく使用中の核燃料も貯蔵されていた。画像からは核燃料が何らかの科学反応を続けており、その結果生じた水素ガスなどの物質が水を混濁させていると考えられる。



正常時ならばこのように見えます
原子炉の透明な水と水底に見える核燃料
これは1号機の原子炉に核燃料を挿入している写真であるが、正常な状態では水は透明であり肉眼で水底にある核燃料がはっきり見える。

参考
4号機プールの核燃料、発熱突出 まだ使用途中の燃料も 
六つの原子炉がある福島第一原発のうち、4号機のプールの発熱量はとくに大きい。使用済み燃料783本のほか、まだ使い終えていない燃料548本が保管されている。機器の交換のため炉内から取り出されていた。使い終えていない燃料の方が使用済み燃料より熱が大きいことも発熱量の大きさに影響している。

4号機のプールでの発熱量は毎時約200万キロカロリー。約1400立方メートル入る貯蔵プールの水の温度を、単純に計算すると1時間あたり約2度上げることになる。




使用済核燃料プールは爆発するのか
1号機、2号機、3号機、4号機の使用済核燃料プールから発生した水素ガスが建屋内に貯留して水素爆発を起こす可能性はゼロではないが、建屋はすでに壊れており水素ガスの貯留による爆発は無さそうである。公開された写真を見る限り、3号機では使用済核燃料プールから大半の燃料が吹き飛んでおり運良く冷温停止したようである。4号機は使用中の核燃料が貯蔵されており最悪の場合、再臨界からメルトダウンに至る可能性が否定できない。また、4号機の建屋がボロボロであり自重で崩壊する危険もある。1号機と2号機の使用済核燃料プールの状態は不明である。



4号機は自重で崩れるのか?
あるいは再臨界からメルトダウンするのか?予断を許さない状況が続く。