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2011年5月31日火曜日

発がん物質ヨウ素131を含む食材が流通、セシウムは生物濃縮される

グリーンピースによる海産物放射能検査結果が発表されました。魚、貝、海藻、ヒトデやナマコなど様々な種から検出されています。汚染は徐々に食物連鎖系に入りつつあります。

農林水産省は「放射性ヨウ素131の明白な発がん性」を隠したまま流通させています。また、「セシウムは蓄積しない」と発表していますが、そもそも暫定基準を超える高濃度のセシウムが検出されること自体、セシウムが生物に取り込まれて濃縮される証拠です。
参考 
農林水産省 水産生物における放射性物質について

注)ロゴが入っている画像はトリミング、URL記入、画質調整、などで加工してあります。
オリジナル画像はURLからご入手ください。

グリーンピースによる海産物放射能検査
出典 グリーンピース
魚や海藻、貝類、なまこ、ヒトデなど海洋生物が暫定基準値を大幅に上回る放射性物質に汚染されている。明白な発がん性のある放射性ヨウ素も高濃度で含まれる。高濃度の放射性ヨウ素が存在する環境の中で人間だけが例外だと考えるのは楽天的すぎる。


グリーンピースのコメント

調査結果概要:

・ 21サンプル中14サンプルが、日本政府の定める暫定規制値を超える
エゾイソアイナメ(福島県)から 1kg あたり 857Bq のセシウム(Cs-134 + Cs-137)を検出
カキ(福島県)から同 740 Bq のセシウムを検出
マナマコ(福島県)から同 1,285 Bq のセシウムを検出
アカモク(福島県)から同 127,000 Bq のヨウ素(I-131)および同 1,640 Bq のセシウムを検出

調査結果まとめ:

海藻類3サンプルで、1キロ当たり100,000ベクレルを超える放射性ヨウ素を検出。日本政府の定める暫定規制値の約50倍。半減期の短いヨウ素の大量検出は、原発から海への放射性物質の放出が続いていることや、莫大の量の汚染水が過去2か月の間に放出されたことを示唆。
・ 13サンプルで放射性セシウムが暫定規制値を超える。半減期の長いセシウムの大量検出は、汚染が長期にわたることを示唆。
エゾイソアイナメ、ナマコ、ヒトデなど、海の底に生息する種からも暫定規制値を超える放射性セシウムを検出。汚染が海の底にも広がっている可能性を示唆。
・ 最も汚染された海藻を年間1キロ摂取すると、2.8mSvの内部被ばく量に値する。
・ 広範囲にわたり高レベルの放射物質が見つかった。政府が言う「放射性物質は海で希釈される」という説は疑問。


福島県の調査でも海藻(ヒジキとアラメ)から発がん性のあるヨウ素131が検出
出典 厚生労働省
福島県の調査ではヒジキからは暫定基準を超える2200Bq/Kgの放射性ヨウ素が検出された。アラメからも明白な発がん性物質である放射性ヨウ素が1100Bq/Kg検出されているが放射性ヨウ素の暫定基準を下回るため、セシウムの値によっては出荷される恐れがある。


淡水魚にも広がる放射能汚染
出典 農林水産省
福島産のアユ、ヤマメ、ウグイなどの淡水魚も放射能に汚染されている



水産物の放射能検査実施状況
出典 農林水産省
黄色は暫定基準を超える放射能に汚染された水産物が採取された地域
福島第一原発から30キロ以上離れた地域の淡水魚も汚染されている

海藻類の放射能検査結果
魚種採取地採取年月日地図番号採取部位総放射性セシウム検出結果(Bq/kg)放射性ヨウ素
検出結果(Bq/kg)
トサカノリ
東京都
利島村地先
4月3日
121
全量
検出限界未満
4.91
ヒジキ
(乾燥ヒジキ水戻し)
千葉県
鴨川市天津
3月24日
36
全量
検出限界未満
65
ヒジキ
(乾燥ヒジキ水戻し)
神奈川県
三浦市金田地先
4月4日
88
全量
検出限界未満
216
ヒジキ
(乾燥ヒジキ水戻し)
神奈川県
三浦市金田地先
4月4日
125
全量
検出限界未満
9.48
ワカメ
福島県
いわき市久ノ浜沖
5月16日
313
1200(※)
380
ワカメ
福島県
いわき市下神白沖
5月16日
314
280
140
出典 農林水産省
農林水産省の調査では全ての地域の海藻から発がん性の明白な放射性ヨウ素(131)が検出されている。しかし、放射性ヨウ素の暫定基準値は2000Bq/Kgと高いため、放射性ヨウ素(131)を含んだ海藻が流通した可能性が高い。


放射性セシウムは生体内で濃縮される

農水省主張の「ごまかし」
出典 農水省
農林水産省は「放射性セシウムは生物蓄積をしつづけるわけではない」と言っていますが、環境中のセシウムは体内に取り込まれ濃縮されます(生物濃縮)。農水省は「生物濃縮はかなり低い」としていますが、大型の魚では約100倍に濃縮されています。また、グラフの縦軸を対数表記にして縦方向に圧縮し、DDTを併記することで生物蓄積を目立たなくしています。DDTのグラフを消して、縦軸を10進法表記にすれば違った結論になるでしょう。これは「ごまかし」です。


暫定基準が高すぎて検出されても出荷される

乳児の基準は原発排水基準の2倍
出典 放射能について正しく学ぼう


放射能入り食材を給食に使って大丈夫?
暫定基準とは安全宣言するためのインチキ。
出典 放射能について正しく学ぼう




コメント

農林水産省は放射性ヨウ素131の明白な発がん性には触れず、セシウムは蓄積しないと発表している。しかし、暫定基準を超える放射能が検出されること自体、セシウムやヨウ素131が体内で濃縮される証拠である。

放射性ヨウ素の半減期は約8日と短いにもかかわらず現在も検出されているということは、原発の汚水が漏れ続けている可能性や原子炉が再臨界となり持続してヨウ素131が放出されている可能性がある。

放射性ヨウ素131は明白な発がん性が有るにもかかわらず暫定基準が高く設定されており、放射性ヨウ素131を含む食品が流通して学校給食に使用されている可能性が高い。

日本の暫定基準そのものが異常で、乳児の基準が原発の排水基準の2倍である。このような異常な暫定基準に基づいた安全宣言には全く意味が無い。暫定基準とは安全宣言するためのインチキである。





 

2011年5月27日金曜日

4号機の原子炉で核燃料が燃焼中! その2 「動画あり」

福島第一原子力発電所で起きた4号機の爆発について、東京電力は3号機で発生した水素が排気管を通じて4号機に流れ、4号機の爆発を引き起こしたと発表しています。そうであれば3号機と4号機は同時に爆発したはずです。

4号機の原子炉で核燃料が燃焼していることを示唆する動画をご紹介頂きました。

東京電力は4号機の原子炉には核燃料が入っていないと発表していますが、公開された資料は原子炉で核燃料が燃焼していることを示唆しています。

参考
4号機爆発、3号機の水素ガス逆流が原因か 東電推定 2011年5月15日http://www.asahi.com/national/update/0515/TKY201105150225.html

 注)ロゴが入っている画像はトリミング、URL記入、画質調整、などで加工してあります。
オリジナル画像はURLからご入手ください。

3月14日 3号機爆発直後の写真
3号機爆発の3分後、3月14日11時4分に撮影された画像では4号機(右上)は無傷であり、両機が配管等で繋がっていた可能性は低い。


拡大写真では両機を結ぶ排気管が外れており、3号機の水素ガスが4号機に流入する可能性は低い。
3月14日11時4分撮影
http://www.flickr.com/photos/digitalglobe-imagery/5526481182/in/set-72157626248178510


4号機の原子炉格納容器付近から噴出する白煙を撮影した動画。4分40秒頃からご覧ください
Reactor 4, Cement Truck, Vapor Plume - 23 May 2011 TIMELAPSE
この動画はコメント欄から情報提供頂きました。


4号機の中央から白煙が噴出
出典 上記URL 2号機(画面左)と4号機(右)から白煙が出ている(黄色の円内)


4号機建屋の中央付近から白煙が噴出している
4分37秒あたりから、白煙が上方向に噴出しているのが判る。黄色い枠内に白煙の噴出口が見える。白煙の噴出口の上方に天井クレーンが見える。なお、使用済核燃料プールは天井クレーンの手前右側付近にある。
白煙は天井クレーンの後方を吹き抜けて垂直に噴出している
白煙の噴出口は天井クレーンの後方にあり、使用済核燃料プールの位置とは異なる。使用済み核燃料プールは天井クレーンの手前右側付近にある。格納容器付近からの白煙は動画で見るとはっきり判る。


放射温度写真で見ると4号機建屋中央にある原子炉格納容器が発熱している。しかも使用済燃料貯蔵プールよりも温度が高い。
出典 防衛省
4号機の爆発は3号機の爆発の後に生じており、3号機の核燃料が飛散して4号機の原子炉に入った可能性はほとんど無い。4号機の原子炉には核燃料が入っており燃焼していると思われる。 詳しくは下記URLにアクセスのこと。


こちらもご参考下さい

4号機の原子炉で核燃料が燃焼中!

4号機に原子炉爆発の疑い、しかもプラントパラメーターは非公開



コメント

東京電力は福島第一原子力発電所で起きた4号機の爆発について、3号機で発生した水素が排気管を通じて4号機に流れ、爆発を引き起こしたと発表している。

しかし、3号機と4号機の爆発に時差があることから両機が配管で繋がっていた可能性は低い。

更に、3号機爆発直後に撮影された画像では排気管が外れており、この排気管を通じた水素ガスの流入はなさそうである。

4号機の放射温度写真では格納容器中に発熱体が確認されており原子炉に核燃料が存在する可能性が高い。

4号機爆発は3号機爆発の後に起きており、4号機の格納容器には当初から核燃料が入っていた可能性が高い。

福島第一原子力発電所にある6つの原子炉のうち、4号機のプラントパラメーターのみが公開されておらず、4号機原子炉に核燃料が存在することを否定できない。

以上から、4号機の原子炉で核燃料が燃焼中のようだ。

不幸なことに4号機の原子炉には蓋がされておらず、外壁の破損状況から察すると核燃料の大半が飛散したと思われる。このため最初から核燃料は入っていなかったものとして処理したいようだが、原子炉が白煙を噴出しており、このまま放置するのは危険だ。





2011年5月26日木曜日

フランスIRSN「さらに7万人が避難すべき」&「海洋汚染を警告」

フランスのIRSNは福島原発事故の評価について「さらに7万人が避難すべき」と発表しました。


注)ロゴが入っている画像はトリミング、URL記入、画質調整、などで加工してあります。オリジナル画像はURLからご入手ください。


フランス放射線防護原子力安全研究所(IRSN)は5月23日、原発から半径20キロ圏外にも放射線レベルの高い地域があり、この地域の住民約7万人も避難すべきとの見解を示しました。


推定年間被ばく量と人口(空間線量)
出典 IRSN (データは日本の文部科学省)
推定年間被ばく量(空間線量)の高い地域に人口密集地が重なる。


セシウムによる土壌汚染と推定被ばく線量及び人口
出典 IRSN (データは日本の文部科学省)
セシウムによる土壌汚染が強い地域に人口密集地が重なる。


上図の汚染地域住民の推定被ばく量(1年間)
出典 IRSN (データは日本の文部科学省)
上の地図で
の地域は年間10mSv以上被ばくする
黄色の地域は年間16mSv以上被ばくする
オレンジの地域は年間50mSv以上被ばくする
赤の地域は年間100-500mSv以上被ばくする

IRSNによると「警戒区域外では最も汚染が激しい」この地域には14歳以下の子ども9500人を含む約7万人が暮らしている。ここに住み続ければ福島原発事故発生からの1年間で、フランスで原子力事故時の公衆の安全基準となっている年間10ミリシーベルトを超える放射線を浴びることになるという。年間10ミリシーベルトは、フランスで自然放射線源から浴びる放射線量の3倍にあたる。食物や飲料水の摂取による内部被曝は含まれていない。

またIRSNが避難すべきだとした7万人のうち2万6000人以上は、事故後最初の1年間の被曝量が16ミリシーベルトを超える可能性があるという。

上記はAFP通信の記事を利用しています。
「さらに7万人が避難すべき」、仏IRSNが福島原発事故の評価を更新 (2011年05月25日)

低気温のエクスタシーbyはなゆー様の情報も参考にしました。


上図の汚染地域に10年、70年住み続けた時の被ばく線量
緑の地域は10年間で38mSv以上、70年間で82mSv以上被ばくする
黄色の地域は10年間で63mSv以上、70年間で136mSv以上被ばくする
オレンジの地域は10年間で190mSv以上、70年間で408mSv以上被ばくする
赤の地域は10年間で380-1900mSv以上、70年間で816-4080mSv以上被ばくする



海の汚染も進む

福島第一原発から海に放出される放射能汚水
出典 IARC
4月20日から4月27日に採取された海水中セシウム137の濃度を示す。現在も福島第一原発から継続して放射能を含む汚水が放出されていることを示す。

福島県及び茨城県で採取されたコウナゴの放射能
 出典 IRSN
赤線はヨウ素とセシウムの暫定基準を超えたことを示す。
4月に採取されたコウナゴの放射線量。一部は暫定基準を超過するが、暫定基準を下回るコウナゴも高いレベルで放射能に汚染されている。コウナゴは食物連鎖系の初段階に位置し、次にコウナゴを捕食するタラやマグロなど海洋生態系に汚染が広がっていく。

 
コメント

フランスのIRSNは福島原発事故の評価について「さらに7万人が避難すべき」と発表しました。

これは、フランスで原子力事故時の公衆の安全基準となっている年間被ばく線量10mSvに基づく勧告である。

日本では子供の年間被ばく線量上限を20mSvに引き上げてしまったため大人も避難できない状態になっている。

IRSNは10年、70年と継続して住み続けた場合の積算被ばく線量を試算しているが最大4080mSvになるという。最初の一年間で健康影響が現れることは無くても、汚染地域に住み続けることが健康へのリスクになることを示唆している。

また、福島第一原発付近の海水調査により、4月後半になっても原発から放射能を含む汚水が継続して放出されていることが示された。

食物連鎖系の初期段階に位置するコウナゴから放射能が検出されており、これを捕食するタラやマグロなど海洋生物への汚染の拡大が懸念される。









2011年5月24日火曜日

空気中のテルル129mが半減期1600万年のヨウ素129になる。ACRO、他

アクロ(ACRO)というフランスの民間組織による日本の放射能モニタリング結果をご紹介します。
アクロは福島第一原発周辺の土壌汚染がチェルノブイリ級であることを再認識させるとともに、土壌からテルル129mが検出されたことを懸念しています。

テルル129m(半減期33.6日)は崩壊すると半減期1600万年の放射性ヨウ素129に変化するため注意深く観察する必要があります。

そこで、改めて日本の調査結果を見直すと、既に土壌や大気中からテルル129mが多量に検出されていました。


注)ロゴが入っている画像はトリミング、URL記入、画質調整、などで加工してあります。
オリジナル画像はURLからご入手ください。


 

汚染はチェルノブイリ級
福島県の土壌 (2011年3月31日)
アクロが測定した数値(Bq/㎡)をチェルノブイリ事故後のベラルーシでの測定値と比べてみます。
185 000 - 555 000Bq/ m² 避難区域
555 000 - 1 480 000 Bq/m² 強制避難区域
広い地域がチェルノブイリ事故時の避難区域、強制避難区域に相当している。

日米合同調査でも同じ結果
出典 米国エネルギー省
チェルノブイリ事故時の基準で見ると更なる避難が必要
■ 185 000 - 555 000Bq/ m² 避難区域
■ 555 000 - 1 480 000 Bq/m² 強制避難区域


宮城、福島、神奈川の土壌からテルル129mが検出
テルル129mは崩壊して半減期の非常に長いヨウ素129になる。半減期は1600万年である。この核種は原発周辺で注意深く監視する必要がある。 出典 ACRO http://www.acro.eu.org/OCJ_jp

そこで、他の調査でも検出されていないか調べて見たところ文部科学省の調査でも検出されていました。

20Km圏内土壌からテルル129m
出典 文部科学省
文部科学省の調査(5月3日現在)でもヨウ素131を上回る多量のテルル129mが検出されている。


千葉市内の空気からテルル129mを検出
出典 日本分析センター
これは空気中のテルル129mである。事故から2カ月近く経過するが、現在も空気中にテルル129mが検出されている。当然、呼吸により体内に取り込まれ得る。

 
CTBT高崎観測所も空気中からテルル129mを検出
出典 CPDNP


コメント

アクロの調査は福島第一原発周辺の広範な地域がチェルノブイリ事故時の避難地域あるいは強制避難地域並みに土壌汚染されていることを再認識させる。

アクロは更に、土壌からテルル129mが検出されたことを懸念している。

テルル129m(半減期33.6日)は崩壊して半減期1600万年の放射性ヨウ素129に変化する毒性の高い物質である。このような物質が土壌や空気中に広く存在していることは、食事や呼吸を通じてテルル129mが体内に取り込まれ得ることを示唆している。

体内に取り込まれたテルル129m(半減期33.6日)は半減期1600万年の放射性ヨウ素129に変化し、放射性ヨウ素131と同様に甲状腺に蓄積されて甲状腺がんの原因になり得る。

テルル129mは複数の調査機関で既に土壌と空気から検出されている。

農産物、魚介類、肉、牛乳、水等の暫定基準にはテルル129mとヨウ素129が含まれておらず、福島第一原発近県の農産物にはこれらの物質が含まれている可能性がある。

現在、食品中のテルル129mとヨウ素129が監視されておらず、子供や妊婦、妊娠可能な女性は福島近県の農産物を避けた方が良い。その地域への居住にもリスクがある。









2011年5月22日日曜日

ヨウ素剤は県の判断で投与中止、IRSNの食品警告 (補足あり)

SPEEDIによる放射能拡散予測の公開が遅れたため、結果的に十分な避難が出来ず被ばくしてしまった問題で甲状腺がん予防のために必要なヨウ素剤は投与されなかったようです。

報道によれば、保安院はヨウ素剤投与を指示しましたが、県の判断でヨウ素剤は投与されませんでした。

参考 
ヨウ素剤配布で混乱、誤った服用指示も

以下引用:原子力安全・保安院の西山英彦審議官は19日夜、「16日朝に20キロ・メートル圏内からの避難者にヨウ素剤を投与するように県に指示した」と説明した。しかし、15日昼過ぎには、避難は完了していた。県の担当課長は「今更、服用させても効果がないと判断し、実施を見送った」と話した。
ヨウ素剤



今回はIRSNが公表している資料をご紹介します。

ちなみにIRSN(フランス放射線防護原子力安全研究所 Institute de Radioprotection et de Sûreté Nucléaire )は放射線のリスクを研究しています。 http://www.irsn.fr/EN/Pages/home.aspx IRSNが日本をどのように見ているか知っておきましょう。


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オリジナル画像はURLからご入手ください。


2011年3月12日より福島第一原子炉から放出された放射能雲大気中拡散シミュレーション
プルトニウム燃料を使用した3号機爆発による放射能は関東圏を直撃した。
出典 フランスIRSN
上記URLからアニメーションを見ることが出来ます。



対甲状腺放射線量(甲状腺の被ばく量)
甲状腺被ばく“100mSv” は日本政府が設置したヨウ素剤服用勧告
出典 IRSN
上記文書の5ページに「“100mSv” は日本政府が設置したヨウ素剤服用勧告の規制量です(フランスでは50mSv)」の記載がある。日本がヨウ素剤服用勧告の基準を“100mSv” にした理由は不明。ただし上記のデータは3月15日現在のものである。



放射性物質放出期間中、無防備状態(屋外)において1 歳児が受け得る対全身放射線量(3月22日まで)
出典 IRSN (上記URLからアニメーションが見れる)
フランスでは10mSv 以下の場合は身体への被害リスクは十分に低いとされ、特別な安全対策は必要ないとしています。参考までに、フランスでは自然放射能と医療被曝から受ける年間放射線量の平均値は3.7mSv です。



放射性物質放出期間中、無防備状態(屋外)において1 歳児の甲状腺が受け得る放射線量(3月22日まで)
出典 IRSN
事故の際にヨウ素の服用が必要とされる放射線摂取暫定基準は日本では100mSv に定められて
いる(フランスでは50mSv)。


IRSNの食品警告

1.5. Food consumption recommendations for all French citizens living in Japan
IRSN recommendations:

- Avoid consuming Japanese sand eel or sand lance.
- Avoid consuming vegetables (spinach, hana wasaki, kakina, komatsuna, lettuce, chrysanthemum, cabbage, white cabbage, celery, broccoli, bok choy, parsley) and mushrooms in the districts of Fukushima, Tochigi, Ibaraki, Miyagi and Gunma.

- Avoid giving children fresh milk produced since March 11 in the districts of Fukushima, Tochigi, Ibaraki, Miyagi and Gunma.

「福島、栃木、茨城、宮城、群馬の葉野菜とキノコを食べないこと、同地域の牛乳は子供に与えないこと」この他いくつかの注意がある。詳しくは原文参照のこと。



SPEEDIの公開が遅れ、更に甲状腺被ばくが100mSvを超えた地域住民にヨウ素剤が投与されなかった。
出典 原子力安全委員会 平成23年3月23日
1=10000mSv
2=5000mSv
3=1000mSv
4=500mSv
5=100mSv
ヨウ素剤の内服が必要となる、甲状腺被ばく線量が100mSvを超える地域が、30Km圏を超えて広がる(画面下のスケール参照)。


保安院はヨウ素剤投与を指示したが県の判断で実施せず
原子力安全・保安院の西山英彦審議官は19日夜、「16日朝に20キロ・メートル圏内からの避難者にヨウ素剤を投与するように県に指示した」と説明した。しかし、15日昼過ぎには、避難は完了していた。県の担当課長は「今更、服用させても効果がないと判断し、実施を見送った」と話した。



コメント

IRSNはIAEAやフランス大使館等を通じて福島第一原子力発電所の事故に関する資料を収集し、独自の分析結果をHPに公開しています。ただし、日本の分析結果とは一致しません。

この中に「“100mSv” は日本政府が設置したヨウ素剤服用勧告の規制量です(フランスでは50mSv)」という一文があります。

そこで日本の原子力安全委員会が発表した「緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)の試算について」を読んでみると、1歳児の甲状腺被ばくが“100mSv”を超える地域が福島第一原発から30キロ圏外にまで広がっています。

保安院は半径“20キロ”圏内の避難者にヨウ素剤投与を指示していますが、県の判断で投与されませんでした。

避難勧告が無かったために逃げ遅れて被ばくし、ヨウ素剤の投与は県の判断で中止されたので、今後は甲状腺がんの発生が心配されます。

現在、IRSNは福島、栃木、茨城、宮城、群馬の葉野菜とキノコを避け、同地域の牛乳を子供に与えないよう警告しています。

事故は終息していません。公的支援も当てにならないので妊婦や子供、妊娠可能な女性は避難した方が安全です。






参考 ヨウ素剤

2011年5月18日水曜日

米国が東北新幹線の被ばく量や健康基準を超過した駅名を公表

米国エネルギー省は5月3日に実施した東京駅から仙台駅(東北新幹線)区間の放射線測定結果を発表しました。その結果、全ての米軍基地・施設で健康リスクが認められる32μR/hr(0.32μSv/hr)を下回りましたが福島駅は44μR/hr、郡山駅は52μR/hr、新白河駅は40μR/hr、那須塩原駅は46μR/hrで基準を上回りました(単位はマイクロレム/時)。

また、東北新幹線で東京仙台間を片道乗車すると0.4μSV被ばくすることが判りました

( 1 Sv = 100 R = 100,000 mR 10μSv =1mR 0.01μSv=1μR )

クリックすると拡大
出典 米国エネルギー省
右図:各駅の放射線量。駅を降りると線量が上がる
左図:東北新幹線乗車による被ばく量
東京仙台間で0.40μSv被ばくする。
( 1 Sv = 100 R = 100,000 mR 10μSv =1mR 0.01μSv=1μR )


米国エネルギー省は32μR/hr(0.32μSv/hr)未満であれば健康リスクは無いとしている。


しかし、福島県では32μR/hr(0.32μSv/hr)を満たす地域は少なく、100μR/hr(1μSv/hr)を超える汚染が広がっている。
出典 米国エネルギー省
米国は原発から80キロ離れるように推奨している



コメント



5月13日、米国エネルギー省は日本の文部科学省と合同で行った新しい調査結果を発表した。これは東北新幹線のルートに沿って放射線量を調査したものであるが、文部科学省のホームページには現在も掲載されていない。

米国は放射線量が32μR/hr(0.32μSv/hr)未満であれば既知の健康リスクは無いとしている。

今回の日米合同調査の結果によれば、少なくとも福島、郡山、新白河、那須塩原は健康リスク基準(0.32μSv/hr)を満たすことが出来なかった。そして駅の外ではもっと高値になるという。

しかしながら文部科学省は今回の調査結果を公表していない。SPEEDIのデータを公表せず福島県民の避難が遅れたのは有名な話であり、文部科学省は国民の健康を考えているのだろうか?

今回の日米合同調査は福島からの疎開を強く促す根拠である。

米国は原発から80キロ離れるように勧告しており、少なくとも妊婦、小児、妊娠可能な女性は疎開した方が良い。








飛行機に乗ると被ばくすることは知っていたが東北新幹線に乗っても被ばくする時代になってしまった。

2011年5月17日火曜日

拡大する汚染(その2) 被ばくは回避可能だった

放射性ヨウ素には明白な発がん性があります。特に、小児と胎児が影響を受けやすいことが判っています(既述)。

現在、福島第一原発から放出される放射能は主に仙台、盛岡方面に流れているようです。放射性ヨウ素による汚染図が5月10日に公開されましたが遅すぎます。


5月10日過ぎにようやく公開された
放射性ヨウ素による土壌汚染
出典 文部科学省
放射性ヨウ素による汚染は福島第一原発から北西部に向かって広がっている(3月18日)。仮定条件に基づく予測値ではあるが放射性ヨウ素による土壌汚染は非常に広範囲だ。
100万Bq/㎡以上 
10万~100万Bq/㎡ 
1万~10万Bq/㎡ 
1000~1万Bq/㎡


下図を見て安心していませんか?
下図にダマされてはいけません
出典 東京都 環境放射線量測定結果
http://ftp.jaist.ac.jp/pub/emergency/monitoring.tokyo-eiken.go.jp/monitoring/graph.html

上のグラフを見て、「3月14日以降は放射能が減った」と喜んでいませんか? 
このグラフを見て喜んではダメです。単に逃げ遅れて被ばくしたのです。


5月8日に実施された福島第一原発1号機二重扉開放では放射性ヨウ素は北西方向に放出されました。


福島第一原発から放出される放射能は北西に向かうことが多く、放射能の放出が続く現在、妊婦や子供、出産可能な女性は原発の北西方面に居住しない方が無難です。


福島第一原発の汚染図
原子炉建屋の北西方向に高度の汚染地帯がある。
3711.9μSvなどというトンデモナイ測定値がある。


浄水場発生土からの放射性ヨウ素の検出
浄水場で検出された放射性ヨウ素の量は福島第一原発爆発事故直後と比べて減少しているが、半減期が短いにもかかわらず、事故から約2か月経過しても検出されており、放射性ヨウ素の放出が継続していることを裏付けている。なお、放射性セシウムは全体として増加傾向にある。東京都も既に汚染されている。


利島村のトサカノリからも放射性ヨウ素が微量検出
出典 東京都
トサカノリとは


利島村
放射性ヨウ素は自然界では通常検出されず福島第一原発に由来すると思われる。
検出された量は微量ではあるが汚染は約300Km離れた島にも届いた。


福島県 魚
出典 農水省
5月9日の検査で高濃度の放射性セシウムとともに半減期の短い放射性ヨウ素131が検出されており、原子炉からの放射能放出が続いていることを示唆している。


栃木県 淡水魚

出典 農水省
放射性セシウム規制値(500Bq/Kg)をわずかに下回る460Bq/Kgや420Bq/Kgの放射性セシウムを含む淡水魚が流通していることを裏付ける。同時に放射性ヨウ素も検出されているが適合と記載されており、これらの淡水魚は流通したと思われる(5月10日~12日採取)。



福島県 野菜
出典 農水省
高濃度の放射性セシウムが検出された福島産シイタケ(5月12日採取)。2つのサンプルから放射性ヨウ素が検出されている。相馬市は福島第一原発の北側、川内村は北西に位置する。川内村のシイタケは流通したと思われる。



出典 文部科学省
原発から30Km以上離れた地域の植物や土壌が非常に高い濃度の放射性ヨウ素や放射性セシウムで汚染されている。植物からストロンチウム90も検出されている。ストロンチウム90は骨に蓄積され、半減期が28.8年と長く、ベータ線を放出するので内部被ばくによる健康影響が大きい。西郷村や大玉村のように遠く離れている地域でも膨大な量の放射性物質による汚染があったことを裏付けている。このような状況下で人体は例外だと考えるのは楽観的すぎる。


コメント

放射性物質の放出は3月14日頃をピークとして、大幅に減少したと報道されている。そのような報道で喜んではいけない。単に逃げ遅れて被ばくしたのだ。

文部科学省は5月になって大量の内部資料を公開しているが、国民に無用な被ばくをさせたことを裏付ける内容でしかない。これは情報公開によって回避可能な被ばくだった。

また、公式発表では再臨界が起きていないとされているが食品汚染の状況を見る限り、持続的に再臨界が起きており核分裂によって生じた大量の放射性ヨウ素が放出され続けているようだ。終息には程遠い状況なので子供や妊婦、妊娠可能な女性は避難した方が良い。

チェルノブイリ原発事故の場合には放射能の放出は2週間で止まったが、福島第一原発事故による放射能の放出は現在も継続しており汚染が拡大しつつある。

最大の被害者は胎児と子供たちになることを忘れてはいけない。